私は、2025年5月に入院して顕微鏡的多発血管炎(MPA)と診断されました。これは、厚生労働省が定めた指定難病のひとつです。まさか私が難病患者になるとは予想もしていませんでしたが、今後のセカンドライフではこの病気と向き合って生きていくことになります。これってどんな病気なの?と検索してみると、同じ病気を患っている方々がブログに体験記を書いて下さっていてとても参考になりました。血管炎は全身の病気で、ひとによって症状も異なるようです。私のケースについて記しますので、同じ病気にかかった方の参考になれば幸いです。
【病気のこと】顕微鏡的多発血管炎(MPA)とは?
顕微鏡的多発血管炎とは?厚生労働省の情報から引用します。
「顕微鏡的多発血管炎」とはどのような病気ですか
顕微鏡的多発血管炎は、腎臓、肺、皮膚、神経などの臓器に分布する小型血管(顕微鏡で観察できる太さの細小動・静脈や毛細血管)の血管壁に炎症をおこし、出血したり血栓を形成したりするために、臓器・組織に血流障害や壊死がおこり臓器の働きが損なわれる病気です。とくに、腎臓の糸球体と呼ばれる毛細血管および肺の肺胞を取り囲む毛細血管の壊死をともなう炎症が特徴的です。免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしていると考えられています。
この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
年間発症率は100万人あたり18人と報告されています。欧米に比べて我が国に多い血管炎です。この疾患で医療受給者証をお持ちの方は、11,078人(令和4年度)です。
この病気はどのような人に多いのですか
高齢者に多く発症し、難治性血管炎に関する調査研究班のデータベースでは、発症時の平均年齢は71歳でした。男性と女性で同じ程度の頻度と言われています。
この病気の原因はわかっているのですか
原因はいまだに不明です。しかし、好中球の細胞質に含まれる酵素(タンパク質)であるミエロペルオキダーゼ(MPO)に対する自己抗体(抗好中球細胞質抗体;ANCA)が高率に検出されることから、他の膠原病と同様に自己免疫異常が背景に存在すると考えられています。MPO-ANCAは好中球を活性化し、各種の障害因子を放出することで血管炎を引き起こすと考えられています。また、好中球が細菌などの外敵と戦うときに使用する好中球細胞外トラップ(NETs)と呼ばれる仕組みが、この病気の発症にかかわることも分かってきました。
この病気は遺伝するのですか
遺伝性の病気ではありませんが、病気の発症に影響する遺伝子の変異(遺伝子多型)が複数見つかっています。
この病気ではどのような症状がおきますか
発熱、食欲不振、全身倦怠感、体重減少などの全身症状とともに、腎糸球体や肺胞の小型血管の障害による症状や検査異常がよくみられます。腎臓の障害により血尿、尿検査異常(尿潜血反応陽性、蛋白尿、赤血球円柱など)、腎機能低下がおこり、肺の障害により肺胞出血や間質性肺炎(胸部レントゲン検査やCT検査でみつかります)がおこり、喀血、血痰、空咳、息切れの症状がみられます。また、関節痛、筋痛、皮疹(紫斑、皮下出血、皮膚潰瘍など)、末梢神経症状(手足のしびれや筋力低下)などもみられます。全身症状にともない腎臓や肺の障害が短期間に進行する場合が多いのですが、ときに尿検査での血尿の持続や肺線維症などが慢性に経過し、他の症状を伴わない場合もあります。
この病気にはどのような治療法がありますか
治療の目標は、副腎皮質ステロイド(ステロイド)や免疫抑制薬、生物学的製剤、補体阻害薬を用いて、血管の炎症を完全に消失させて(寛解導入治療)、その状態を維持する(寛解維持治療)ことです。寛解導入治療では、中等量から高用量のステロイドと免疫抑制薬のシクロホスファミドを併用します。シクロホスファミドの代わりに、リンパ球の表面にある特殊なたんぱく質(CD20)を標的とする抗体製剤(生物学的製剤)であるリツキシマブを併用することもあります。発症年齢が比較的高齢なため、さまざまな合併症を伴う場合も多く、身体の状態に合わせて、治療の強さを調節します。また、補体成分のC5aの働きを抑えるアバコパンを併用することもあります。重症な腎障害を合併する場合などには血漿交換も追加されます。診断後速やかに治療が開始されれば約3~6か月で寛解に至ることが期待できます。寛解に至った場合、ステロイドを減量し、副作用の弱い免疫抑制薬(アザチオプリン)や生物学的製剤(リツキシマブ)による寛解維持治療を少なくとも1~2年間は継続します。このほか、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル(ともに保険適用外)を使用する例もあります。治療により感染症がおこりやすくなりますので、治療を成功させるためには感染症の予防・早期診断・早期治療が特に大切です。
この病気はどういう経過をたどるのですか
治療が行われないと生命に危険がおよぶ病気です。出来るだけ早い時期に診断し、病気の初期にしっかりと治療すれば、8割以上の患者さんの血管炎症状は治まります(寛解)。一方、治療が遅れたり、治療の反応が良くなかったりすると、寛解導入までに時間がかかり、臓器の機能障害が残ってしまうことがあります。広範な肺胞出血を起こすと、一時的に人工呼吸器を必要とする場合もあります。腎不全になった場合には血液透析が必要になります。末梢神経炎に伴うしびれや痛みは、しばしば残存します。また、この病気自体で亡くなられる方は少ないのですが、敗血症や肺感染症、呼吸不全など合併症が原因で亡くなられる方がいらっしゃいます。最近では、早期に診断して、早期に治療を開始できる例が増えるに従い、患者さんの予後は改善してきています。また、病気は再燃することがありますので、定期的に専門医の診察を受け、きちんとお薬を継続して下さい。この際、この病気の活動を知るめやすとして、症状、CRPなどの炎症反応、血液中のMPO-ANCAの値などの推移が参考になります。
この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
治療中は、感染症に対する注意が最も重要です。帰宅時には、手洗い・うがいを欠かさずに実行してください。新型コロナワクチン、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンの接種も可能な限り受けましょう。規則正しい生活と食事を維持してください。ステロイドによる生活習慣病を防ぐためには、体重管理が重要です。ステロイド内服中は、定期的に緑内障・白内障を含む目のチェックを受けてください。骨密度も年に1度は測定してもらいましょう。
この病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名
顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)の3つの血管炎をあわせてANCA関連血管炎と呼びます。
【病気のこと】~2025/5/16 入院までの経緯
病気の始まり
いつから咳が出ていたのかすでに覚えていないのですが、周りから「よく咳をしてるね、大丈夫?」と言われるようになり、体調は悪くはないものの、職場の近くの耳鼻科を受診することにしました。
2023/1/16 先生に症状を説明し、薬を処方してもらうことに。その後のCT検査の結果、「副鼻腔炎ですね。鼻水が出て喉に流れ込むことによって咳きこんでしまう症状です。」と診断されて薬を飲み続けたら約3か月ほどで治まりました。
咳が再発
2023年11月、咳が再発しました。ちょうど会社の産業医との健康面談があったので相談してみました。「過去に副鼻腔炎と言われて薬で治したのですが、再発してしまったので根本的に治す方法はないですか?」。すると産業医の先生から、「慢性副鼻腔炎だと、薬治療で治らない人は鼻の手術を行うこともあります。手術ができる病院を知っているので紹介しましょうか?」とのこと。早速お願いして紹介状を書いてもらい、2023/11/29に大学病院の耳鼻科を受診しました。結果的にこの病院にずっと通うことになります。
発熱
大学病院でもいきなり手術ではなく、しばらく薬治療で経過を見ることになりました。それでも治らず2024/12/21の診察でやっと副鼻腔炎手術を受けられることに決まりました。しかし最短でも5月まで予約待ちだということでしばらく薬治療をそのまま続けていましたが、咳が次第にひどくなり微熱も出たため、2025/4/23に呼吸器内科を受診。胸のレントゲンや採血などの検査を行い、抗生物質の薬で様子を見ることに。
緊急入院
2025/5/16 採血と採尿、レントゲン撮影を行い、呼吸器内科を受診。先生がひとこと、「今日、このまま入院できますか?」。「肺の影が広がり、心臓の周りに水が溜まっています。血尿が出ていますし、血液検査ではMPO-ANCAの数値が基準値3.4以下のところ、236に爆上がりしています」。この結果から、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が疑われるとのこと。緊急入院が決まりました。点滴を受けながら熱を測ると39.6度。
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【病気のこと】2025/5/16~2025/7/2 入院生活
2025/5/16~2025/5/23 入院1週目
緊急入院後、抗生物質の点滴治療で熱が下がり体は楽になりました。翌日、先生から私の病状について5つの説明を受けました。今まで続いていた咳の他にも心臓や肺、腎臓が炎症を起こしていて、複数の科にまたがり検査や治療が必要です。
・ANCA関連血管炎の疑いがあり、検査が必要なこと(リウマチ膠原病内科の領域)
・慢性副鼻腔炎の手術を行うこと(耳鼻咽喉科の領域)
・気管支炎/気管支喘息のこと(呼吸器内科の領域)
・心膜炎のこと(循環器内科の領域)
・腎不全のこと(腎臓高血圧内科の領域)
2025/5/22には、以前から予約していた耳鼻咽喉科の副鼻腔炎の手術を受けました。
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2025/5/24~2025/5/30 入院2週目
病気が複数の科に関わりますが、根本的にはANCA関連血管炎の検査と治療が必要だと判断されて、リウマチ膠原病内科がメインで診ることになりました。
様々な検査を受けたのですが、病気を特定するためには体から組織を採取して分析する検査が最も重要で、私の場合は、副鼻腔炎の手術時に鼻から採取したのと、腎生検と言われる腎臓の組織採取を行いました。その他にも下記のように色々あります。
・日常の測定 体温、血圧、血糖値、体重、動脈血酸素飽和度、心電図モニター
・採血(血管炎の進行と副作用を見る)
・採尿、畜尿(腎臓機能を見る)
・エコー検査(超音波により臓器の画像をリアルタイムで観察)
・CT検査(X線により臓器の状態を断面観察)
・MRI検査(CT検査では区別がつきにくい病変を磁石と電波により断面観察)
・核医学検査(微量の放射性医薬品を注射し、放射される放射線により臓器機能を観察)
・歯科検診(骨粗しょう症の副作用に備えて虫歯を治療)
・眼科検診(眼圧検査や視野検査により緑内障の副作用を経過観察)
・骨密度検査(X線や超音波によりカルシウムやミネラルの量を測定)
・胃カメラ(内視鏡により胃の中を観察)
治療のほうは、ステロイド剤の服用により症状をおさえる治療を開始しました。副作用が出る場合があり、検査の中には副作用を見るための検査(歯科、眼科、骨密度)も含まれます。
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2025/5/31~2025/6/6 入院3週目
2025/6/3 リウマチ膠原病内科の先生から病状説明を受けました。血管炎はさらに3つに分類されるという事で、私の場合はその場では一旦、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と説明されたのですが、後日、腎生検の最終結果が出てきて、結構悪かったのだそうです。そこで、顕微鏡的多発血管炎(MPA)と結論付けられました。補足としては、現在の医学の分類方法に従ってどちらかの病名を付けるしかないが、本当はさらに私の症状に合った分類をすべきなのかもしれない、ということでした。「腎臓の症状はあと一週間見つかるのが遅ければ結構危なかったかもしれません、呼吸器内科の先生が気づいてくれて良かったです。」と言われ、私も先生に感謝!
2025/6/6 病気が特定されてリツキサンという抗がん剤の一種を使用することになり、点滴を開始しました。リツキサンの点滴は1週間おきに4回行うのがセットになっていて、6/6,6/13,6/20,6/27に決まりました。
入院生活も3週目になると体調はかなり落ち着いてきて、体温は37度前後で推移。体力が落ちないようにストレッチやスクワットなどの運動を始めました。
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2025/6/7~2025/6/13 入院4週目
2025/6/12 タブネオスという、2022年から日本で使用可能になったANCA関連血管炎治療用の免疫抑制剤の服用を開始しました。新薬なので高額なのですが、これをステロイド剤と併用することでステロイド剤を減らすことができるようで、副作用の心配も減らせそうなので私にとっては期待大。
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2025/6/14~2025/6/20 入院5週目
2025/6/14 ボナロンという骨粗しょう症治療薬の服用を開始しました。ステロイド剤の副作用として骨粗しょう症に影響することが分かっているため、今後しばらく飲み続けなければいけないようです。
私は副作用が出にくいようで、これまで血圧や血糖値は正常値ですが、胸と背中に赤いニキビが出来ました。
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2025/6/21~2025/6/27 入院6週目
2025/6/27 抗がん剤のリツキサン点滴4回目を行い、これで1セット終了です。6/28に退院できると聞いていたのですが、血液検査の経過データによると、まだ心臓機能に関わる数値が基準の5倍以上あって、これがなかなか下がっていないとのこと。循環器内科によるMRI検査が追加となり、動機や心臓発作の懸念があるため退院は延期になりました。
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2025/6/28~2025/7/2 入院7週目 退院
※ 編集中 今後更新します
【お金のこと】医療費の負担軽減方法を調べてみました
医療費の負担軽減方法を調べてみました。私の場合は以下の3つが対象になり、併用が可能という事でした。
- 指定難病の医療費助成制度(自治体に申請)
- 高額療養費制度(国民健康保険や健康保険組合に申請)
- 医療費控除(確定申告)
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【お金のこと】かかった医療費
指定難病の医療費助成制度に関わるため、医療費の記録を付けることにしました。
2025年医療費
日付 | 内容 | 助成対象医療費 | 助成対象外費用 |
---|---|---|---|
2025/5/1 | 外来(新型コロナ検査) | 2,190円 | |
2025/5/7 | 外来 | 230円 | |
2025/5/9 | 外来 | 13,200円 | |
2025/5/9 | 調剤 | 3,850円 | |
2025/5/16~31 | 入院 | 205,495円 | |
2025/5/16~31 | ベッド差額 | 135,300円 | |
2025/6/1~30 | 入院 | ||
合計 | 222,545円 | 137,720円 |
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